CellWalk:生物の美をvisionOSで

A large, colorful 3D molecular model of a synaptic active zone floats in an apartment living space viewed through Apple Vision Pro, with a city skyline visible through floor-to-ceiling windows behind it. The structure resembles an elaborate bouquet, with layered clusters of purple, pink, and cyan proteins rising from a cylindrical base. A floating UI panel to the left displays explanatory text titled "The Active Zone," describing the role of scaffold proteins in neurotransmitter release.

「CellWalk」は、いわば命を吹き込まれた生物学の教科書です。ユーザーに生物学への扉を開き、鮮やかな3Dモデルの細胞構造を調べたり探索したりする機会を与えてくれる素晴らしいvisionOSアプリです。

学生や科学愛好家のために作られた2025年Apple Design Awardsファイナリストの本作では、生命の分子を形成する緻密な構造を間近で観察できます。画像はフルカラーで、わかりやすい解説も付いています。ユーザーは、細部まで精緻に再現された複雑な生物(2億5,000万個の原子を持つ単細胞生物、マイコプラズマ菌など)のイラストを見ながらピンチ、パン、回転などの操作を行えます。

「CellWalk」では数千もの構造を表示でき、科学的な生データを「くつろぎながら観る映画のような体験に変え、次から次へと驚きの瞬間をもたらします」とアプリのデベロッパ兼共同クリエーターのTim Davison氏は言います。


CellWalk

  • 対応デバイス: iPhone、iPad、Apple Vision Pro
  • チームの規模: 2人
  • 拠点: カナダ

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Davison氏が「CellWalk」の開発を始めたのは、カルガリー大学の博士課程時代です。大学のコンピュータサイエンス学科の教授に、David Goodsell氏による生物学の名著『生命のメカニズム』を手渡されたことがきっかけでした。そこでは、分子の世界が目を引く水彩画で描かれていました。

「生物学の教科書に載っている図というのは、抽象的なものばかりなんです」とDavison氏は回想します。「ですが、『生命のメカニズム』では細部まで詰まっていて、混沌としていました。この本を開いて、こう思いました。もしこの本の中に入り込んで、3Dで見ることができたらどうなるだろう、と。それが私の使命となりました」

「CellWalk」に命を吹き込むには、何年もの労力が必要でした。Davison氏は当初、初期のバーチャルリアリティシステム向けの3D体験を構築しましたが、ユーザーはデバイスの使い方を理解するのに苦労しているようでした。「日常生活で使える製品を作って、誰にでも使えるようにしたかったんです」とDavison氏は言います。「それには、visionOSこそが最良の方法でした」

「彼らのアプリは美しかった」

A cross-sectioned spherical 3D model of what appears to be a cell or organelle hovers above a small side table in a living room, rendered in {Apple Vision Pro} passthrough. The model’s interior reveals a dense tangle of yellow filaments studded with pastel pink, teal, and lavender molecular clusters. A city skyline stretches across large windows in the background, and a couch with patterned throw pillows is visible to the left.

Davison氏の目標の1つは、「CellWalk」に登場する多くの酵素、脂質、リボソームを目を引くものにすることでした。「豊かなカラースキームにしようと思いました」とDavison氏は言います。「たとえばDNA鎖に注目してほしいときは、彩度を下げて滑らかに暗くし、ノイズを取り除いて、1つの対象に意識が向くようにします」

2000年代と2010年代にWWDC Scholarshipを数回獲得していたDavison氏にとって、「CellWalk」のビジュアルをできるだけ魅力的に仕上げることが重要でした。「ほかのデベロッパがデザインにこだわっていることに感心しました」とDavison氏は言います。「ただすごいテクノロジーを作れるというだけではなかったんです。彼らのアプリは美しくかった。そのことがずっと、私の作品の指針となっています」

生物自体が美しい。私たちのアプリは素材の良さがあってこそなんです。

Tim Davison氏(「CellWalk」クリエーター)

Davison氏はまた、「CellWalk」を完全にインタラクティブなものにし、生物学の教科書とは一線を画そうと考えました。「CellWalk」では、たとえば細菌の細胞をドラッグしたり、回転させたり、切断したりできるほか、情報にも簡単にアクセスできるため、見ているものを理解しやすくなっています。Davison氏によると、36億個の原子から成るニューロンなど、あらゆるものをタップできます。

生命のメカニズムを描く

An Apple Vision Pro spatial display shows a large cinematic panel filled edge-to-edge with a densely packed, top-down view of purple synaptic vesicles, each rendered as a circular bloom with a dark magenta core. A caption at the bottom of the panel reads "Presynaptic Bouton" with a subtitle describing the molecular machinery of neurotransmitter release. A narrow vertical thumbnail strip on the left shows additional views of the molecular model at different scales and angles.

「CellWalk」のモデルを最新かつ正確な状態に保つため、Davison氏は、タンパク質データベースを継続的に更新している国際蛋白質構造データバンクのデータを使用しています。「毎日大量の新しいタンパク質が同バンクに登録されています」とDavison氏は言います。「このパイプラインを使って最新かつ最高の情報を取り込みます」(マイコプラズマ細胞などについて、Davison氏はスクリプス研究所の計算構造生物学センターと密接に協力しました。ここは『生命のメカニズム』の著者であるDavid Goodsell氏の拠点です。「自分にインスピレーションを与えてくれた本の著者と一緒に仕事ができたんです」とDavison氏は語っています)

10年以上「CellWalk」に取り組んでいるDavison氏は、空間コンピューティングの進化を目の当たりにしてきました。「昔の不格好なコントローラや不十分なVRインターフェイスでは、このアプリはうまく機能しなかったでしょう」とDavison氏は言います。「Apple Vision Proでは、空間コンピューティングが徹底的に見直されています。「CellWalk」初体験という人ても、使い方はすぐにわかるはずです」

こうしたあらゆる要素が、次世代の生物学者を育てるアプリを開発するというDavison氏の目標を後押ししています。Davison氏には、複数の教師から授業で「CellWalk」を使いたいという声が届いています。また、学習でどのようにアプリを使いたいかを確認するため、学生からのフィードバックも積極的に収集しています。

An iPad stands upright on a wooden table in a warmly lit library study hall, with rows of people working at long tables softly blurred in the background. The iPad screen displays a 3D molecular model of an orange, cone-shaped viral capsid against a deep blue background, accompanied by a panel of descriptive text on the left side of the screen. A playback scrubber at the bottom of the screen suggests the model is part of an interactive, guided experience.

もしかすると、今日カラフルなmRNA分子を拡大したり縮小したりして楽しんでいるユーザーが、数年後には実際のラボで実物と向き合っているかもしれません。

そうなればDavison氏は喜ぶでしょう。とはいえ、自然の営みを自分の功績にすることには消極的です。「生物自体が美しい」とDavison氏は言います。「私たちのアプリは素材の良さがあってこそなんです」


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