「変化を生むことが私たちの目標です」：App Store Awardsを受賞した3組のチームの紹介
2023年12月7日
App Store Awardsでは毎年、人々の生活の向上に役立ち、技術革新、ユーザー体験、デザイン、文化的な貢献において最高レベルを達成した優秀なアプリを讃える賞を発表しています。
今年は、フライトトラッカーから、レトロゲーム、ワークアウトプランナー、瞑想パズルまで、あらゆるジャンルの40組のファイナリストから受賞者が選ばれました。どの受賞者も、それぞれのアプローチ、スタイル、手法は驚くほど多彩であり、Appleのツールとテクノロジーを熟知し、使いこなしています。
Meet the winners and finalists of the 2023 App Store Awards
探し物ゲームの「Finding Hannah」の開発チームにとって、カルチャーインパクト部門での受賞は特に意味のあることでした。Fein Gamesスタジオの共同設立者兼マネージングディレクター、Franziska Zeiner氏は、ベルリンのオフィスで次のように語っています。「私たちは、よりパーソナルなストーリーをメインストリームのユーザーに届けることで、デザインのレベルから変化を起こしたいと考えています。『Finding Hannah』は3世代にわたる物語です。登場人物たちは、『どうすれば女性としての真の自由を掴み取れるか』という疑問に直面します。」
「Finding Hannah」に登場するハンナはベルリン在住の39歳の女性で、キャリア、（元親友のエマとの関係を含む）人間関係、そして真の幸福の意味を追求しています。プレイヤーは一連の探し物パズルを解きながら、ハンナの母親と祖母にまつわるストーリーを進めていくことで、ゲームにパーソナルな要素を加えていきます。
私たちは、よりパーソナルなストーリーをメインストリームのユーザーに届けることで、デザインのレベルから変化を起こしたいと考えています。
Fein Games共同設立者兼マネージングディレクター、Franziska Zeiner氏
アートのデザインによってゲームの時代背景の違いを表現するために、デザインチームは普段とは異なるアプローチを試みました。Zeiner氏は次のように語っています。「ゲームではなくソーシャルメディアで見られるようなアートスタイルを目指すことにしました。ゲームをあまりしない人たちにリーチすることが狙いでした。そのためには、従来のゲームでは見たことがないようなスタイルにする必要があると考えたのです。それによって新しい視点が生まれ、このゲームの個性を際立たせる結果になったのではないかと思います。」
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今年のベストMacアプリ部門を受賞した「Photomator」の開発チームであるPixelmatorは、2023年のApp Store Awardsの受賞のほか、これまでにApple Design Awardsを何度も受賞した経験がある、賞の選考では常連のチームです。特にベストMacアプリ部門の受賞は、リトアニアに拠点を置くチームにとって特に意味があります。Pixelmatorチームの主任デベロッパ、Simonas Bastys氏は次のように語っています。「私たちがMacを第一にしている企業であることに変わりはありません。私たちの仕事に関して言えば、Macはユーザー体験に多くのメリットをもたらしてくれます。」
2020年、「Photomator」を自社のMacアプリのポートフォリオに追加するにあたり、Bastys氏とそのチームのエンジニアは、UIKitとAppKitコードを移植しないことに決めました。その代わりに、SwiftUIを使用してMac専用のPhotomatorを構築しようと試みました。「AppKitについては多くの経験を積んでいましたが、将来性のある最先端のテクノロジーに合わせるためにSwiftUIへの移行を選んだのです」とBastys氏は言います。
チームは、ユーザーが大規模なライブラリのナビゲーションや操作を行うことを想定して、パフォーマンスを最大限高めることに専念しました。また、修復、デバンド、バッチ編集など、数多くの強力な編集ツールを統合しました。何に取り組み、何を優先するかを決める際には、いつも議論が巻き起こります。「私たちは多くのアイデアに並行して取り組んでいます。何を優先するべきかは、すぐに出荷できるものは何か、どのようなテクノロジーが新たに登場するかを考えれば自然に決まります。」今年、チームが重点を置いているのはHDRです。
AppKitについては多くの経験を積んでいましたが、ネイティブのMacテクノロジーを使って制作したいと考えたのです。
Pixelmatorチームの主任デベロッパ、Simonas Bastys氏
Bastys氏とPixelmatorチームは、今後どのように成長を続けていくのでしょうか。Bastys氏は言います。「これはコンピュータサイエンスにおいて最もエキサイティングな分野です。学ぶべきことはたくさんあります。私はまだ、人間の視覚やコンピュータの画像処理の奥深さについて理解し始めたばかりです。これからも挑戦は続くでしょう。しかし、『Photomator』をクリエイターにとってより良いものにできる可能性は無限に広がっています。」
Download Photomator from the Mac App Store
カルチャーインパクト部門の受賞作品である「Unpacking」を制作するにあたって、クリエイティブディレクターのWren Brier氏とテクニカルディレクターのTim Dawson氏のオーストラリア人コンビは、互いの10年以上にわたる開発経験を活かしました。禅の要素を取り入れたパズルと人生の物語を組み合わせたこのゲームでは、子供時代の部屋から始まって、最初に引っ越したアパート、そして次の場所へと移動しながら、ある女性の人生をたどっていきます。プレイヤーは、それぞれの新居に荷物を置いてパズルを解いていくことで、レベルが上がるごとに彼女の物語を詳しく知ることができます。Brier氏によれば、このゲームは探偵小説に似ているそうです。
Brier氏はブリスベンにある二人の自宅から次のように話してくれました。「さまざま場所で、用意されたヒントを解き明かしながら、彼女の人物像についてピースをつなぎ合わせていく感じです。」
Brier氏とパートナーのDawson氏が「Unpacking」のアイデアをどこから得たかというと、若い頃に引っ越しをしたときの体験からでした。Brier氏は言います。「1つの箱を片付けたら、その下にある箱を開けていく作業にはゲームの要素がありました。荷物を棚や引き出しにしまうことができれば、タスクは完了です。Timと私はすぐにゲームについてアイデアを出し合いました。」
Dawson氏によると「このアイデアは技術的に興味深いもの」でしたが、二人は特に開封する作業を物語を展開する手段として使用するというアイデアに惹かれたとのことでした。Dawson氏は笑いながら言います。「この例はかなり変わっているかもしれませんが、ゲームには料理用のヘラが出てきます。ヘラはごく普通の家庭用品ですが、どのような見た目でしょうか。手っ取り早く手に入れた安物のプラスチック製のヘラでしょうか。フライパンの上に置き忘れて焦げてしまったヘラでしょうか。それとも、ハンドルにゴムが付いた高級ブランドのヘラでしょうか。これらすべてが絵を描くときの出発点となり、こうして親しみを感じながらキャラクターのことを知ることができるようになるのです。」
1つの箱を片付けたら、その下にある箱を開けていく作業にはゲームの要素がありました。
Unpackingクリエイティブディレクター、Wren Brier氏
こういった詳細について突き詰めていったおかげで、ブタの貯金箱やボードゲームを振ったときに得られる触覚フィードバックを追加するなど、斬新な方法でテクノロジーが活用されたゲームが誕生しました。とはいえ、このゲームがカルチャーインパクト部門のApp Store Awardsを受賞した理由は、その多様でインクルーシブなストーリーにあります。Brier氏とDawson氏は、年齢や背景を問わずさまざまなプレイヤーが自分自身や自分の持ち物、そして人生そのものを新居に移すというこの普遍的な体験に惹かれて、このゲームを楽しんでいると言います。Brier氏は笑いながら言います。「ある男性は自分のボルダリングシューズの写真を私たちに送ってきて、ゲームに登場するものとまったく同じだと言いました。彼によると『これほどわかってもらえていると感じたことは一度もありません』とのことです。」